活動報告

2011年12月2日

原発事故後9ヶ月、今考えるべきこと その1

がん・感染症センター都立駒込病院放射線科 唐澤克之

原発事故が発生してもうすぐ9か月になりますが、未だ現地では懸命な復旧活動が続けられています。空気中に拡散している放射性物質の量は、現在では爆発事故当時の百万分の一程度まで低減し、新たに原発から放出される放射性物質による被曝については、心配のないレベルまで低下しています。

 現在福島県以外での関心事は食材からの内部被曝の影響と考えられます。この点については次のように考えられたら宜しいでしょう。今食材に関する暫定規制値(主にセシウム-137についての)は500ベクレル/kgとなっています。これは言い換えますと濃度としての規制値です。すなわち、食品としてはもう一つどれだけの量を食べるかということを同時に考えなければなりません。例えば主食として一食当たり沢山食べるお米は、おかずとして少量食べる野菜やキノコなどに比べて、重量として多く摂取してしまいます。今、サンプル検査をして暫定規制値を下回っていれば、市場に流通してしまいますが、仮に全て1キログラムあたり500ベクレルとして計算しますと、やはり主食のお米が一番影響を与えそうです。よって考慮すべきは、メニューをもう一度見直し、例えば1週間にどの位どのようなものを摂っているかを推計し、それからどの程度の量の内部被曝が生じ、それを減らすのにはどうすべきかを検討することです。

 また世の中には、産地を伏せてかつ線量の測定をしていない食品が沢山ありますので、色々な産地の色々な種類の食材をバランスよく食べて頂くのが、リスク回避に繋がると考えられます。またそのようにバラエティーに富んだメニューにすることも精神的にプラスになると思います。また陸上の生物に関する被曝状況はよくわかっておりますが、海産物に関しては、汚染の広がりが、陸上ほどよくわかっていません。よって海産物に関しては特に産地に注意する事と、海産物は副食物ですので、それこそバラエティーに富んだいろいろなものを食べることがよいと思います。

 特にこの影響を最も受けるのが、成長が活発な小さいお子様や、妊婦さんなので、それらの方はより注意して食品をチェックされることをお薦めします。

 少々窮屈なお話でしたが、これがいつまで続くかということにつきましては、今後の原発事故の収束状況や除染事業の進捗状況に依存しますので、何とも予測は難しいところです。ただ、40歳を過ぎた成人の方には殆ど何も起こらないと考えますので、どうぞご安心になって生活して下さい。

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